「世相話題での事業者の企業意欲に関する雑感」3

7)経営変革による共同製作での「重ね畳み引き戸」の実用化 

K社は、創作された組子建具については他社にない表現を示した格子組子を使用した組子装飾構造体を基準して、多数顧客が集会する施設などの設置に適した組子の扉を持つ特殊装飾部屋、及びシャンデリア製品を事業として進められている。またこれら創作された商品については名称からのブランド化も進めており、事業に組子技能で商品群の創出を主体的にした企業方針にされている。

一方大川地域には建具関係企業50数社あり、産業変革の様相と事業規模による受注の減少によって建具業界の苦難の道に入っている状況で、経営的に事業所間において大きな格差が生まれている。それらの大川の建具事業所の生き残りの手段として、全体で世相にマッチした創作商品の創出を志して事業経営を成し遂げることを目標にされている。

大川の建具事業所のうち活動的企業を4グループに分けて、1グループで5事業所と著名なデザイナー1名を中に入れた構成によって新作建具類の創生を試みられていた。これら創作するグループ中で、K社を中心にしたグループ5事業所が全社密に連携をして、戸袋がなく開口を広くできる新作重ね畳み引き戸を提案して、実用化への道へと前進させている。

特にK社を含むグループにおいて、K社はJR九州の「7つ星列車」など高級観光列車の内装を手掛けた水戸岡氏の支援も基に高技能を持つ建具匠職人群であり、種々の大きなデザイン的設備、部品群を完成させている。このK社の代表が先頭に立って、全く新規な建具を新鋭なデザイナーの協力の基に重ね畳み引き戸を創作された。 

創作の中で引き戸において薄板等を重ねたブラインド方式に溝的レールで縦側,横側に連ねて開閉する重ね畳みの引き戸であり、1~4.5畳の程度な小型部屋でも引き戸を設けても、戸袋が少なくてよい構造になる。またこの製品は全く新規で、種々の小型部屋、或いは意匠を強調する部屋の装飾部材に対して引き戸として有効的であって、特に小部屋で場所の狭い部屋では扉に工夫を要する薄板をブラインド方式で溝的レールに上下、縦横左右板戸の折り畳みの扉である重ね畳み引き戸が伸縮・摺動できるものでもある。 

さらに意匠を強調する部屋で和風様式の状態で、扉の古典的装飾性をもたらせるものになっている仕組みに仕上がり、情緒性に富む木製、和紙製の引き戸であって、それによって雰囲気を少し和らげて、構造が簡単で製作費が安くなっている。主な構成部品は全て木製とした新規な和紙障子型の和紙様樹脂シートであるが、樹脂製和紙であるワーロンシート張りの格子組立式重ね畳み引き戸にも上市することを狙っている。 

上記の点をさらに詳しく示すと、小部屋で場所がない部屋では扉に工夫を要する薄板をブラインド方式で上下、縦横で折り畳みの扉が伸縮できるものであり、しかも和風様式の状態で、扉の古典的装飾性ももたらせるものになっている。戸袋を持たない引き戸である重ね畳み戸は、各連続短板戸部の両端に逆方向に繋ぎ板部を設けた単型万字模様型短板戸部における各繋ぎ板部を隣合わせで組み合わせできるようになっている連結畳み戸単体数体を連結したもので、重ね畳み戸に対して枠体からなる四角周囲の上下の枠板に、又は左右側枠板に溝レール部を設けて、前記レール部に溝部と凸部を交互に配置して、連結畳み戸単体がレール部の溝部で合うように引き戸の配置にしている薄板製重ね畳み引き戸になっている。 

ワーロンシート張り格子組立式重ね畳み引き戸も権利化も済まされて、また「引引引戸」のブランド名称における商標権も取得されている。この完成は有能なデザナーの存在の基にグループ5社の団結の先導するリーダーの存在であろう。それをK社代表がなされたものである。グループの組織体では如何に優秀なリーダーが結束の役目をなしていると言える。独自の優れた匠群の技術の上によい支援者を加えられていることが推進拡大の大きなポイントなっていると感じている。 

具体的な技術内容は,戸袋を持たない引き戸である重ね畳み戸で、各連続短板戸部の両端に逆方向に繋ぎ板部を設けた単型万字模様型短板戸部における各繋ぎ板部を隣合わせで組み合わせできるようになっている連結畳み戸単体の数体を連結したものであり、厚さ6~10mm、幅100~300mm、高さ100~2000mmの重ね畳み戸単体5~20体を連結したものであり、前記重ね畳み戸に対して枠体からなる四角周囲の上下の枠板に、又は左右側枠板に幅40~160mmのレール部を設けて、前記レール部に溝部を3~12箇所と凸部を2~11箇所で交互に配置して、連結畳み戸単体がレール部の溝部で合うように配置にしている前記重ね畳み戸に対して枠体からなる四角周囲である上下の枠板に、又は左右側枠板にレール部を設けて、連結畳み戸単体がレール部の溝部で合うように配置にしている重ね畳み引き戸である。 

現在板材から和紙様障子型に興味が高いので、この製品がホテル、レストランなど古風、モダンな建物に適した特徴ある引き戸であり、イベントなどの設備にも含めて、非常に顧客からの期待が高いものである。この製品、技術を販売、或いは他社ライセンス・販売する場合には権利化が重要なものとなってくる。和紙障子型和紙様樹脂シートであるワーロンシートの技術を基に新規事項を掘り起こして、ホテルなど高級グレードの部屋、場所に設置されて実証されている。 

8)3K労務と原料枯渇問題からの「人工藺草の茣蓙製品」の事業展開

T社は、藺草を栽培して、その天然の藺草を染色、或いは特殊加工して藺草商品の事業を推進されている。天然藺草からの茣蓙製品として、特異体質の方に対する対策をした藺草製品、また従来的畳敷き概念とは異なったフローリング床用連結置き畳とその接合具などを含めた製品を幅広く創出して上市されている。また藺草の新規用途として茶染め藺草の微粉末を開発した応用製品、健康食品などを提案されている。一方茣蓙の製品を主力とする販売拡大の戦略を構築されており、フロアの住宅に敷く、軽量で薄物の畳、敷物の表面に模様を付ける製品、藺草で織り込んだ製品に対しての装飾模様を施した茣蓙の市場を高めており、全国に代理店経由して幅広く販売展開されている。

最近の畳表、茣蓙の市場状況において、全国的に藺草の栽培で過酷な労働によって藺草栽培農家が少なくなっており、自然から生まれた天然藺草より特質な性能を生み出させることから人工藺草に切り替えた製品が市場に広まっている。日本の住宅用床材としては、フローリング、カーペット、クッションフロア、畳茣蓙などがあるが、日本の生活習慣に合い、保温性、弾力性、感触性に優れた天然藺草からの簡易、軽量的な畳、茣蓙が見直されている。特に天然藺草の栽培が藺草の栽培で過酷な労働からの数量の削減と人工藺草の特殊性能での特徴から人工藺草への転換期になっている。

T社独自での人工藺草の取り扱いの可能性の検討を始められている。この人工藺草については、大手の住宅部品メーカーの大建工業㈱と積水成型工業㈱などが先行されており、特に大建工業は25年前から本格的に検討を開始して、上市製品として先行している。最近この人工藺草の特性から畳、茣蓙の市場もこの人工藺草製品に移行しつつ、また市場でもこの人工藺草の製品群が広まっている。日本においては熊本、福岡での藺草の栽培を推進することは非常に難しくなり、福岡の産地である大川市、大木町での藺草の栽培はゼロに近づいており、寒い時期に植え付け、真夏の猛暑の時期に収穫する藺草の栽培方法と、栽培者の高齢化が進んで藺草の増産の再開は困難な状況になっているようである。また住宅の畳の部屋が少なくなり、畳、茣蓙の需要が極端に減少しており、現在の住宅、家族事情では復活の可能性が極端に薄いものとなっている。

したがってT社としてこれら人工藺草の畳、茣蓙産業に参入できるか、特に知財上、あるいは技術・製品上において可能であるのか、調査を始めた。その結果、先発メーカーの大建工業㈱の人工藺草に関する特許は、約20件前に出願されており、その中で畳・茣蓙の製造法は15件近く出願しており、登録は6件程度である。その中で紙テープに撚りをかけて筒撚り撚糸を含浸用樹脂に含浸させて筒撚り撚糸を得る技術のものが主体である。また20年経過した基本特許も存在しており、それらを考慮すると大建工業の権利を回避できる可能性もある。しかし大建工業で紙テープを使用した人工藺草の権利は強く、しかも市場も確立されており、非常に硬い壁になっているようである。 

近年では最近の住宅事情の問題点を解決したフローリング床材用上張材の素材として紙の特性を活かした人工藺草に注目を受けている。薄紙を用いた藺草製造法としては抄造した紙を20~40mm程度の幅に裁断して、これに筒状に撚りをかけて抄繊糸を形成し、この抄繊糸を機織することによって畳表とする方法が注目されている。実例として厚さ25μm程度の紙を25mm幅のテープ状とし、これに撚りをかけ太さ1.1mmの抄繊糸を形成して、この抄繊糸にアクリル樹脂液と,水の処理液で含浸し、1分間加熱乾燥し樹脂硬化後,アクリル樹脂液と,フッ素樹脂,水よりなる処理液を含浸し、加熱乾燥し樹脂を硬化させたものを編織した製品となっている。

一方技術的、知財的において、独自の参入が可能か、或いは既存の人工藺草の強調できる特徴と弱点は何かを専門的に機器分析して明確にしたとのことである。すなわちこの分野における特許調査の支援から、並びに既存製品の特殊機器分析の解析の支援から事業化の推進にたいして問題ないか明らかにしたい意向であった。既存人工藺草の製品に関して特殊機器分析によって、各人工藺草の特性を測定して、性能に及ぼす効果と特徴を明確にされた。 製品サンプルを分析する測定項目は、①各特性(熱、着火、着色、吸水、伸び、破壊など)、②表面状態(電子分析)、③成分分析(どのような成分かIR)、④構造分析(藺草の内部の状態、組織など)であり、専門機関に分析依頼して、自社製品の特徴を明確化されている。分析結果を基に自社製品の技術特徴を照らせ合わせて解析して、既存製品の特性と技術の盲点を抽出されている。 

この藺草の分野における技術調査の支援と、既存製品の特殊機器分析における人工藺草の解析から、既存企業の人工藺草製品と比較して、紙の撚り方、その表面の樹脂の被覆状態、また樹脂成分も異なり、若干既存製品の物性で劣るところがあるが、自社人工藺草を使用して茣蓙商品に使用することも可能性があり、さらに被着樹脂成分も異なることから、特性において違いは見出せることが分かった。

また特許の調査とその解析から、大建工業㈱と積水成型工業㈱における組成、成分、構造、特性とを比較して、解析の結果からT社製品に対して両者の権利範囲の技術と権利外の技術に分別できて、期待している人工藺草の権利も可能性が明確になって、T社として開発の方針、或は事業推進方策の一助となる期待が得られるようであった。しかし日本の大手企業を相手にするには斬新なアイデアを導き出すことと、作成した人工藺草の性状の分析と解析と合わせて新規アイデアを出させられるかであろう。特に化学的専門知見を持って対処できる人材の投入が必修であろう。

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