日経平均株価「3万9千円超え」で思うこと

2024-2-29(AYSA西部部会会員 MYZ)

 令和6年2月23日の大手新聞各社朝刊一面トップ記事は、「東証 史上最高値 34 年ぶりに更新」だった。私が思うに、令和 6年 2月 22日の日経平均株価の終値(3 万 9098 円 68銭)は、これからの日本株式市場で歴史に名を残す株価となるのであろう。

 ところで、34 年前の私は、大手金融機関から関連証券子会社に出向していた。その当時は、円高不況(プラザ合意)からの脱出を意図した超金融緩和政策が続いていた。そのことでの潤沢な余剰資金は「土地転がし」への投資に向かい、いわゆる「土地神話」(土地の値段は上がり続ける)を生むこととなった。加えて金融機関による過大な不動産融資への拡大が不動産価格の更なる上昇に拍車をかけた。もちろん、株式相場の上昇による「日本企業の時価総額」(ジャパン・アズナンバーワンの呪縛))の膨張も併せて生みだしていた。多くの企業も本業とは異なるリゾートやゴルフ場開発、そして「財テク」にまで手を広げていたのである。バブル崩壊後に、この後始末(トラウマの解消)に日本は長い年月を要したのである。これが今言われている「失われた30年」に繋がったのだろうと思う。

 ちなみに「バブル景気」は、1986年(昭和61年)12月~1991年(平成3年)2月までの51か月とされ、その時期には日本で起こった資産価格の上昇と好景気、そしてそれに付随する社会現象が生じたと言われている。その資産価格の上昇の一つでもある株式市場では、1989 年(令和元年) 12月29日に、日経平均終値は過去最高値(3万8915円87銭)を付けた。その当時の証券マンにとっては忘れられない日となり、若干の不安を感じながらもまだこれが続くと予想していた。NTTや JR の民営化もこの時期に重なる。この民営化は国が保有する株式の放出により、国民の金融資産を吸い上げたことで、バブル崩壊後の国民のリスク資産に対するトラウマが生じたのである。この時期の後半にかけて、少数派の経済学者は警笛を鳴らしていたが、当時の国や日銀はそのことに対し聞き耳を持たなかったのではないか?「バブル崩壊」という危機意識は未だ小さかったのであろう。

 遅ればせながらの、1990 年(平成 2 年)の 3 月に日銀による総量規制、ここから日本の資産圧縮が始まった。いわゆる「金融機関の不良債権」は予測不可能な額まで膨張していたのである。急激な引き締めに転じたことによる「バブル崩壊」は必然だった。このバブル崩壊により、過剰な不良資産を抱えた大手の金融機関や多額の損失補填をした証券会社等の破綻が生じ、このことによる金融市場の大混乱を避けるために、国は公的資金を注入し、救済のための多重合併を推し進めたのである。このことにより多くの金融・証券マンは配置転換を余儀なくされることとなった。私もその一人である。

 翻って考えてみると、私が埼玉県の K 市に中古マンション1室を購入したのは1989年の7月だったと思う。未だバブル期の中頃で、その後も数年は購入したマンションの公示価格は上昇し続けていた。しかし、バブル崩壊後は一転して値下がりしていたが、私は約25年近くそのマンションに住み続けたことで元は十分に取れたと、今は考えることにしている。

 バブル崩壊後の日本の金融市場は、一時、回復基調に入ったと思われる時期もあったが、その都度、アメリカの IT バブルの崩壊やリーマンショックなどで大きな影響を受け、行ったり来たりが続いた。やはり、日本の様々な基盤が十分に立ち直っていなかったのだろう。その間には、企業のコ ーポレートガバナンスの強化や東京証券取引所の市場改革が進められてきたが、それが直ちに効果が出るものでもなかった。

 私は、アベノミクス(様々な功罪の意見があることは承知の上で)は、日本のデフレ基調を払拭する一つの契機になったのではないかと思う。しかし、日銀は2%の物価上昇目標に固執するあまり、超緩和政策が10年以上も続くとは想定していなかった。
その間、実質賃金は横ばいもしくは下がり続けていたのである。これが、日本経済の高揚には繋がらなかったといっても過言ではない。国と日銀との軋轢はあったにせよ、それはないだろう。すでに、先進国ではインフレ対策で金利の引き上げが実施されている。何とも不可思議な現象だ。このことにより為替は大幅な円安に振れ、資源高による物価の上昇等、市民生活は大きな影響を受けている。(もちろん円安で潤う企業もあるが)日本の資産価値が対外比大きく目減りしてきていることは確かだろう。一方で、この円安により海外投資家は日本への投資に資金が向かい、日本経済的にはプラスに働く要素が大きいのだろう。そのことによる各企業の24年3月期の決算は過去最高が予想されている。

 さてこの株価の上昇はいつまで続くのであろうか?それぞれの専門家はそれなりに理屈をつけて説明をしている。一方では「生活実感のない株高」とも言われ冷静な判断で見ている人たちもいる。私がこれから注意しておく事象は、やはりアメリカだろう。今のアメリカの好景気がいつまで続くのか?そして秋の大統領選でトランプは?トランプ・リスクともいわれているが?そしてこれからの日本の金融政策で金利はどうするのか?更に地政学的なリスクの発生源はどうなるのだろうか?ただ、日本企業の業績はしばらく上昇期入り、株主還元の拡大は期待できるだろう。ふと、そんなことを考えながら、この「トップニュース」を冷静にとらえることにした。(完)

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