宇部市定期文化講座「音楽の広場」に参加して

2023-3-1

 私は、幼い頃から歌う事が好きだった。修ちゃんはいい声で歌っているねと周りからよく言われていたこともあるのだろう。この”いい声”(?)は、父譲りだったのではと、今は秘かに思っている。それは、父が謡曲を趣味としていたからである。私が物心ついてからの記憶では、夕食後に、父は「謡や鼓」の稽古に熱中し、「能や謡曲舞台」のイベントがあれば、勇んで助太刀として各地に出かけていた。父のこの趣味は、年老いてからも続き、夕食後に、母や隣近所の人を数人集めて謡や踊りを教えていた。きっと、彼の生き甲斐の一つだったのだろう。今でも、父の謡の声を思い出し、私は、きっとこの声を継いでいるのだろうと懐かしく思い起こした。

 ところで、私と音楽を繋いだのは、まず「歌う」ことからだったと思う。今は、小学校時代のことはほとんど思い出せないが、中学校時代は、歌唱のテストもあり、勉強をしなくてもいい成績が取れていた。中学 1年生の時に、音楽の先生から「小学校で市民学芸会が開催されるので、そこで中学校の代表として独唱してみなさい」と言われた。これが、大勢の前で歌う、初めてのことである。早速、授業が終わった後に、歌唱指導を受け、練習した。何か月ぐらいやったか覚えてはいないが、練習で歌う事は、嫌ではなかったし、むしろ楽しかった記憶がある。歌った曲は、スペイン民謡の「追憶」である。「星影優しく、瞬くみそら・・・・・・」、今でも口ずさむことが出来る。

 高校時代は、合唱部に入りかったが、汽車通学でクラブに入ると帰りが遅くなることもあり諦めた。どちらかというと、スポーツ(特に野球)をすることに夢中になった。当時、音楽の授業で「クラシック音楽」を聴く時間があったが、未だその音楽の良さを味わえる大人にはなっていなかったかなと、今では思う。大学時代は、野球に集中し、音楽へのあこがれや興味は薄れていた。

 ところが、社会人になると、それまでとは大きく生活様式が異なっていた。まずは、寮生活である。同部屋での友人が、「クラシックや映画音楽」が大好きで、大型のプレーヤーを購入し、仕事疲れを癒すために、それらの音楽を夜遅くまで楽しんでいた。私も、改めてそれらの音楽の良さを知ることになり、「クラシックや映画音楽」のレコードを買いあさり、彼のプレーヤーを借りて一緒に楽しんだ。このころから、幅広いいわゆる「広義の音楽」というものに興味を持ち始め、仕事疲れを癒しつつ、楽しんでいた記憶が蘇る。
 もちろん、 歌う事を通じての人付き合いも大事にした。飲み会のあとの二次会では「カラオケ」、よく 歌ったものだ。当時の上司や同僚から、「マイクを通した声は素晴らしいよ!」と煽てられることを期待していた「自分」を、思い出して少し照れくさいが、これも若さゆえのことだったのだろう。

 当時の私は、歌謡曲の中でも演歌が大好きだった。30歳代は主に「三橋美智也」(「哀愁列車」「星屑の町」「リンゴ村から」「古城」・・・)で、彼の高音で鼻にかかった声が大好きで、自分でも真似して歌ったが、40歳代には「布施 明」(「霧の摩周湖」「シクラメンの香り」・・・・、50歳代には「五木ひろし」(「罪と罰」「由良川慕情」・・・・)や「吉幾三」(「雪国」・・・「鳥羽一郎」(「兄弟船」・・・)等、よく歌った。おそらく、この世に歌う事が嫌いな人はいないだろう。もちろん、私も歌う事を続けてきたのは、やはり好きだったからである。

 ところで、この年齢(77歳)になって、カラオケで歌う機会はなくなった。もっぱら、ラジカセなどで聴いて楽しむ方法に変わってきた。聴くことは、歌う事と違って音楽のジャンルも変わる。演歌は何となく馴染めなくなってきた。年齢と共に食べ物の好みが変わるように、音楽も肌で感じる気持ちも変わってくるのだろう。最近は、明るく、前向きで、元気で、そして自分を励ますポップ調の音楽が心地よくなってきた。特に、井上陽水や徳永英明(他にも多くの歌手はいるが)の高音でハスキーな歌声が耳に心地よく響く し、心を揺さぶられる。

 今回の「音楽の広場」への参加は、この年齢になって歌うことを再現したい郷愁もあり、子供の頃によく歌っていた「唱歌」や「海外民謡」は 懐かしく歌える。私の「話声」は、幼少のころから、よく聞きづらいと言われてきた。しかし、歌っている声は全然違うし、大きな声を出して 歌うことも出来る。
 今年の学習発表会で歌う6曲は、「サウンドオブミュージックより ドレミの歌」「オーシャンゼリゼ」「見上げてごらん夜の星を」「ふるさと(嵐) 」「マイウェイ」「うれしいひなまつり」で、混成合唱である 。講師の指導で、それなりに仕上がったようだ。しかし、私事でこの発表会には参加できないことは心残りとなるが、これからも、今、歌えることに感謝しつつ、そのことを大事にしながら、シニアの皆さんとのコミュニケーションも楽しんでいきたい。(完)

MYZ(AYSA西部部会会員)

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